夕餉の邪魔するこいつはだーれ?

暗闇から現れた男はこう言った。
男「た、助けてください・・・・・・」
えーと、この状況はどうゆうことかしら。ちょっと前から考えてみようか。
―モノローグ―
近くに気配を感じた私は気づいてないふりをして油断させ、優位に立つつもりだった。そして、思惑通りなんの警戒も無く気配は近づいてきた。薄暗い中でも視認できる距離まで近づいたことを感じた私は念のため銃を携えてそいつを押し倒そうとした。しかし・・・・・・。
ノローグ終了。
「えーと、いろいろ聞きたいことはあるけど、とりあえずいったい何から助けてほしいって?」
男「・・・・・・空腹からです」
あー、なんか頭痛くなることを聞いた気がするんだけど・・・・・・。
「もう一度だけ聞くわよ? 何から助けてほしいって?」
男「だから空腹からですって」
男の腹がタイミングよく音を立てる。どうやら聞き間違いとかではなかったってわけね。なら、こうするしかないっ! 私は銃を男に向けて、心から叫ぶ。
「あんたに分けてあげられる食料なんてすこっしもないのよ! わかったらさっさとこの場を立ち去りなさい!」
男「そんなこと言われても、お腹が減って動けないんですよー」
「そんなこと私の知ったこっちゃないわ! いいから早く立ち去りなさい! 撃つわよ?」
男「ふふ、ご冗談を。たかが少し食料を分けてほしいだけの善良なる人間を撃つはずがありませんよ」
「じゃあ、あんたは悪人に決定! なら撃ってもいいわね。じゃあそうゆうことで!」
早口で捲くし立て、私はなんのためらいも無く引鉄を引く。銃が『ドン!』と小気味いい音を立てて火を噴いた。
男「グッ!」
男は何の抵抗もできず倒れた。やれやれ、眠ってくれたか。静かになったのでまた夕食の続き。残りのサンドイッチをゆっくりと、噛み締めながら食べた。
「ご馳走様でした」
ちょっと男の様子を見る。脈、眼球の様子、呼吸と生きていることを確認する。とりあえず大きな異常はないようだ。
「ふむ。撃たれたことにビビッて気絶したってとこかしらね。なら放っておけばいいでしょ」
・・・・・・まぁ弾は間違いなく当たっているのだが、気にしない。
「ふぁーあ。そろそろ寝ようかしら。こいつの相手したらさらに疲れちゃったわ」
テントに入り、寝袋にくるまる。そして、心地よい眠りに落ちた。



「(んん・・・。あれ? 生きているみたいですね。でもなんだか)身体がうぎょきゃにゃい!」
どうやらあの銃の弾は痺れ薬だったらしいですね。口も回らないばかりか、立ち上がることさえできないとは。そして、この弾を撃ちこんだ女性は寝入っているご様子。となれば
「(僕は朝までこのままということですか。やれやれ)」
お腹はすいたままですし、動けませんし、どうにもなりませんね。しかたない、とりあえず寝てしまいましょう。このまま起きていてもさらにお腹がすくだけです。
意外と冷静な思考能力を持った男も、浅いながらも眠りに落ちていった。
          ―そして、目覚めの時が近づいてくる―